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ハイキャスランプ点灯 パワステ BNR32

「パワーステアリングが重くなる」

BNR32のオーナーさんからのご相談がありました。

 

パワーステアリングの構造、

エンジンの動力をベルトで伝える方法や

電動などがありますが、

パワーステアリングポンプが作った油圧を

ステアリングギアボックス部

パワーシリンダーと呼ばれるチューブ

中央で仕切られ移動できる構造ですが、

その左右サイドから油圧差を与え、

例えば右側の油圧を上げると左側に押される動作を利用し、

ドライバーの操作を補助するようになっています。

油圧の左右差の調整を機械的に行う場合は、

ステアリングギアボックスのコントロールバルブが

直進状態、負荷が小さい状態、負荷が大きい状態で

隙間が変化し、左右の油圧差を作り出しますが、

電気的には、ステアリングギアボックスや

室内のステアリングコラムに装着されたセンサーによる信号を

制御コンピューターが判断し、

バルブの操作で油圧の差を調整しています。

駐車場などでの低速時は、

軽く動くように油圧差を上げていますが、

高速道路など、速度の高い状況では、

ステアリングが軽すぎると、

進行方向が急激に変化し危険なため、

少し重たくなるように設定されています。

しかし、センサー等の情報に

精度や数の不足が発生した際には、

コンピューターは

「扱いやすさ」と「安全」を天秤に乗せて「安全」を選択し、

パワーステアリングの動作を意図的に重くしています。

 

コンピューター本体の動作が正常であれば、

センサーやソレノイド(油圧を制御する電気的な通路です)に

何らかの異常が発生した場合には、

コンピューター診断機で異常を検知することが可能です。

状況によっては、

メーター上に異常警告が表示される場合もあります。

 

ご相談の車両では、警告灯の表示はなく

故障診断機でのテストでも異常がありませんでした。

 

パワーステアリングが重くなる別の原因として

パワーステアリングポンプの消耗があります。

ここが壊れてしまうと必要な油圧を作れないため、

当然、ステアリングは重くなります。

BNR32のパワーステアリング用の油圧ポンプは

ベーン式と呼ばれるタイプです。

パワーステアリングポンプ内部では、

複数の溝がある円盤(ローター)の溝に板を挟んだセットが

筒状の円筒の中で回転するようになっています。

ローターの回転軸の中心は、ケースの中心とずれた構造や

円筒が正円から部分的に広がった構造で、

回転しながら隙間が広がったり狭まったりしつつ、

板は遠心力で外側に広がり、

常に板と板の間で容量を保つ動作で

仕切られた部屋が移動し、

パワーステアリングフルードを

間断なく必要箇所に油圧を作りながら送っています。

このような構造です。

種類によっては、

吸入口と排出口が二つあるため

一回転で二度の出力が可能となり、

効率よく安定した性能を発揮できるようになっていますが、

部品を擦りつけながら動くため

プレートやケースの内壁等、

長期的には、必ず消耗します。

 

BNR32のパワーステアリングポンプは、

現在、製造中止状態で

ヘリテージで再販される予感はしますが、

7万円の燃料ポンプが20万円を超えている

現状での価格設定を考えると

パワーステアリングポンプもすごい金額になりそうです。

ケース内部や回転ローターが完全に消耗した状態では

修復は不能ですが、

性能が残っている「お疲れの状態」程度であれば、

高い確率で修復が可能で、

プレート、中心軸のベアリング、オイルシール等の交換と

軸の曲がりを測定修正したリビルト品という

とても都合の良い製品があります。

自分でがんばって直すよりも明らかに安くて確実です。

 

走行距離が多い場合や

モータースポーツ等でパワーステアリングフルードが

リザーバータンクから噴き出したような経緯があれば

適度なタイミングでのリビルトはお勧めです。

リビルトは、専門のメーカー数社が行っています。

楽なケースでは

事前にリビルト済みの製品を先送りしてもらい、

交換後に取り外した部品を送り返す流れですが、

BNR32用のポンプは

現状ではほとんどのリビルトメーカーに

ベースになるポンプの在庫が無く、

車両から取り外して先に送り

リビルト完了後に返送される順での対応になっています。

その間、車両は待機状態になります。

 

機能を失っていないパワーステアリングポンプは

そのよう意味で貴重です。

今後も長く乗り続けるオーナーさんには、

壊れていなくてもある程度の距離を経た

パワーステアリングポンプのリビルトは良策で、

パワーステアリングが重くなるBNR32も

これまでにリビルトの経緯はなく、

原因がポンプの性能劣化以外であっても交換によるメリットは大きく、

これで直ってしまえば、まさに理想的です。

 

ですが・・・、

リビルトのために先送りしたポンプを待機しているある日

オーナーさんから衝撃の発言がありました。

それは、このBNR32の前のオーナーからの情報で

 

「メーターの警告灯が気になったので、球を抜いて対策した!」

 

・・・・・・・・・。

通常、メーターの警告灯が点滅した際には、

BNR32では、

トランクルーム内の上側にある

E-TSコントロールユニットの自己診断で

何らかの表示がされているはずですが、

そこは、真っ先に点検しています。

「↑」のユニットです。

下側に窓があります。

黄色の〇部分↑の窓のLEDが点滅します。

ちょうどこのブログを書いているタイミングで

「壊れたかも・・・・」

と・・・、メーターの警告灯が光った後、

トランクルームの上記ユニットのライト点灯を確認し、

動画で撮影、

LINEで状況の連絡があった常連さん(紫さん)の

行動力と知識はさすがです。

彼からの動画です。 (掲載許可、頂きました!)

参考にまで

点滅回数での故障内容です。

1回 前輪右側の回転センサー(経路)

2回 前輪左側の回転センサー(経路)

3回 後輪右側の回転センサー(経路)

4回 後輪左側の回転センサー(経路)

5回 ABS前輪右側のアクチュエーターソレノイド(経路)

6回 ABS前輪左側のアクチュエーターソレノイド(経路)

7回 ABS後輪のアクチュエーターソレノイド(経路)

8回 ABSユニット本体のモーターとリレー(経路)

(5回、6回、7回と8回のモーターは、ABSユニット内です)

9回 ABSアクチュエーターリレー(経路)

(8回、9回では、リレーの可能性が高いです)

10回 E-TSコントロールユニット電源(経路)

11回 前後Gセンサー1(経路)

12回 前後Gセンサー2(経路)

13回 前後Gセンサー1または前後Gセンサー2(経路)

(11回、12回、13回では、Gセンサーの可能性が高いです)

14回 Gセンサーの電源1(経路)

15回 Gセンサーの電源2(経路)

16回 横Gセンサー(経路)

(14回、15回、16回はカプラー部の接触不良が多かったです)

17回 エア抜き用コネクター(経路)

18回 E-TS圧力スイッチ(経路)

19回 E-TSモーター、モーターリレー(経路)

20回 E-TSソレノイド(経路)

21回 スロットルセンサー(経路)

22回 E-TSオイルレベルスイッチ(経路)

24回 消灯または点灯のまま、EーTSコントロールユニットのアース(経路)

 

ここで異常個所を確認できれば

交換部品を高い確率で限定ができますが、

点灯はなし。

・・・・

だったのですが、

メーター内警告灯の電球を抜いているとは・・・・。

早速、メーターを分解確認すると

「HICAS」のところの球が無くなっていました・・・・ (泣)

電球を復帰すると、

「HICAS」の警告灯が

キーオンの状態で、

激しく自己主張するように光り輝きました!

しかし・・・・、

先のE-TSのユニットでは、

故障時の点灯が無いのは確認済みで・・・、

しかし、・・・・・

整備書にあった説明の文章、

24回の場合の

「消灯」または「点灯」・・・

 

「消灯」って何?!

 

24回消灯って、

日本語として変でしょう?!

それ以前に

警告灯の球が無いとか

どこかの野蛮人の所作と変な日本語の複合が

今回の故障発見を阻んでいるような気がしてきました。

 

24回の消灯・・・

つまり点灯しないケースでの故障として

整備書での説明の通りに考えると、

もしかすると、

E-TS制御ユニットか

ハイキャスとパワーステアリングの制御ユニット

どちらかの故障が原因の可能性があります。

早速、店舗にあった中古品に交換、

テストを実施することにしました。

制御や診断をすべきこれらのユニットが壊れていたとすれば、

何を調べても意味がありません。

 

最初に、

E-TS制御ユニットを交換してみたのですが

何ら変化なし。

メーター上の警告灯

「HICAS」のランプは、

相変わらずの自己主張を行っています!

次に、ハイキャス、パワーステアリングのユニットを交換すると

・・・・

何と!

警告灯は消えてしまいました!

 

ユニットの故障だったみたいです・・・・

 

しかし、ふと・・・

作業中に気になったことが一つありました。

このハイキャスとパワーステアリングのユニットは

車両本体からの二つのカプラーで電気的に接続されていますが、

カプラーの1つを外す際、

ロックのための中央のフック部を押さえつつ引っ張ると、

勢いでもう一つのカプラーも外れてしまいました。

「お!作業が早いー!」

と思ったのですが、

よもや・・・

最初からしっかりカプラーが装着されていない状態で

接触不良になっていたとか・・・・。

そこで、もう一度、本来のこの車両のユニットに戻し、

しっかりと二つのカプラーを奥まで力一杯押さえつけながら装着したところ、

 

メーターのHICAS警告灯 消灯したまま!

 

「よもや、よもやだ!」  (煉獄さん 風)

 

カプラーの接触不良が原因でした。

過去、この部品の脱着を行った経緯を記録簿から調べてみたのですが

一度も無いみたいです。

まさかの新車時からの負の遺産の可能性がありそうです。

 

リビルトメーカーからは、

パワーステアリングのポンプには内部のプレートに消耗があり、

油圧は正常値よりも下がっていたとの報告がありました。

修復されたポンプの性能と、

カプラー部分の故障も直り、

現在、とても快調なパワーステアリング状態になっています。

 

ところで、

先のE-TS故障についての動画のBNR32の

点灯回数は18回ですので、

E-TSの圧力スイッチの不良を表しています。

最近、この部品の故障が増えていますが

日産からの新品の供給は無く、

ヘリテージでの対応は可能ですが

金額が・・・・・

部品単体での購入は不可で

取り外して発送、

セットでの修理だけが選択肢ですが、

そのような事情もあって、

現在、独自での部品を作成中です。

このスイッチによるアテーサの制御についての

構造と影響については、

またどこかでご紹介させてください!

 

 

 

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