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コンピューター ECU 3

BNR32が発売されたのは平成元年ですので、

設計はそれ以前の昭和に

こんな車を作れたことは本当にすごいと思います。

当時の技術レベルは想像以上かも知れません。

 

当初、ネコ・コーポレーションの機材を導入し

スタートしたのは、SR20DETエンジンのロムチューンです。

ヤシオファクトリーから推薦ですので自然の流れです。

 

当時、

シルビアS13、S14、S15搭載のSR20DETエンジンでは

比較的濃い空燃比が常識とされていたそうです。

サーキットでは、

ストレートで黒煙を吐きながら走行するのは普通です。

なぜ濃い空燃比で設定するのか・・・?

それにはガス冷却が関与しています。

ガス冷却とは、燃焼に必要以上の量のガソリンを

密閉されたシリンダー内に投入し、

燃焼とは熱や光をともなう酸化のことですから

制限のある酸素量がすべて使われた状態では、

燃料は液体から気体に変化するだけの状態を利用し

燃焼室の温度を下げます。

ガソリンやシンナーなどが手に付くと冷たくなるのは、

気化する際の分子が運動エネルギーを奪う気化熱が原因ですが

この反応を利用し、燃焼室の温度を下げるのがガス冷却です。

最大の爆発状態では、

大きすぎる発熱が燃焼室の金属を融解するため冷却するのですが、

しかし、過ぎたるは・・・のことわざの通り

燃料が多すぎるとガス冷却が過度に行われ

爆発力が落ち、パワーダウンを発生してしまいます。

燃費も悪化し、

余ったガソリンがシリンダー内壁の油膜を破砕する

「希釈」という現象を誘発し、

本来であればシリンダーとピストンリング間にある油膜が弱くなり

直接接触でピストンリングやシリンダー内壁に摩耗が出る場合もあります。

そのため、目標とする空燃比の数値はとても重要で

それらへの見識でエンジンの性質は大きく変化することになります。

 

SR20DETの場合、

当初は燃料の比率が多い空燃比が常識とされていました。

ですが、燃焼温度が下がり遅くなってしまいます。

その当時、ヤシオファクトリーの岡村さんは、

「本当にそんなに濃い状態がエンジンにはベストなのか?」

チューニング業界では常識とされたその数値に対して

常々疑問に思っていたそうで

ある日、

「今日は壊すよー!」と・・・

エンジンがどこまで耐えるのか、

どの数値が速いのか、

それらを確認するためにシルビアを積載車でサーキットに搬送し

ロムを変更させて実証を行ったそうです。

燃料を薄くするとノッキングが発生しやすくなる傾向があり

インジェクターの燃料噴射時間を制御すると同時に

点火時期調整も必要になりますが、

それらを1日かけてテストを行い、

結果、これまでよりも大幅に薄い空燃比でも

エンジンはまったく壊れないことを実証しました。

ですが、薄すぎると遅い。

本来、ガソリンが燃えてエンジンはパワーを得ますので

当然の現象ですが、

それらの貴重な数値を

食事をしながら教えてもらったこちらは、

超近道人間になってしまいました。

 

その頃、

「コンピューターチューンでエンジンが逆に不調になる」

そのような言葉を聞くことが多かったのも事実です。

 

 

(続きます)

 

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