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日別アーカイブ: 2024年1月17日

アテーサE-TS用電気センサー

アテーサE-TSの圧力スイッチのフルード漏れが続き、

(BNR32が顕著に多いです)

しかし、この部品は生産が終了し、

ユニットをセットで日産に送っての現物修理方法の選択肢はあるものの

ヘリテージでの金額は悩ましい高額です。

R35エアフロ流用と同じく、

代替えで使える部品の製作できないものかと考え

3年かかってしまいましたが修理に使えるようになりました。

 

問題の多いフルード漏れのスイッチです。↓

BNR32では、リアデフ上の位置で、ここからフルードが漏れます。

デフ上ユニットの黄色の〇の場所、

圧力を検知し、オンオフの動作を行うこのスイッチは、

配線からフルード漏れが発生するケースもあります。

(センサー部から加圧したテスト中の画像です。)

スイッチから漏れたフルードは、

通常はリアデフの左側から地面に落ちますが、

配線部からの漏れでは、配線内部を押し出され移動し、

配線の端のリアデフの右側のカプラー部分から漏れる事例もありました。

R’sミーティングで初めてお会いしたBNR32のオーナーさんからは、

4WDの警告ライトが点灯し、トランク右のフルードが減る症状ですが、

漏れる位置がリアデフ右側で、スイッチ本体からの漏れは確認されず

「アテーサのスイッチ以外での可能性はどこかありますか?」

そのような実に具体的なご相談がありました。

「なぜ、リアデフの右側なのだろう・・・?」

センタートランスファーとユニットの間のホース類が近い位置ですが、

太い内径のため漏れると激しい量になるはず。

しかし、漏れはポタ・・・ポタ・・・・と少量のしずくのような落ち方で、

後日、積載車で愛知県へ引き取りにお伺いしました。

早速、リオに戻ってリフトアップで調べてみたところ

狭い配線内部をフルードが移動し、

リアデフ右側の通電カプラーから地面へ落ちていました。

 

R’sミーティングでは、

このアテーサのスイッチのご相談でのご来店が多く、

起こるべくして起こっている故障のようです。

 

先日、

初めてのBNR32のオーナーさんから

アテーサーE-TSの圧力スイッチからのフルード漏れについて

お電話でのご相談がありました。

早速、車両をお預りし、圧力スイッチからのフルード漏れを確認しました。

典型的な故障のケースです。

よく研究されているお客様で

同時にアキュムレーターの交換のご依頼もありました。

 

取り外したアキュムレーターですが

外観での破損は無く、

故障診断でも異常の表示は無かったのですが、

単体でのテストで故障が確認されました。

↑新品のアキュムレーターの画像です。

 

取り外したアキュムレーター↓ですが、

フルードの通路の下部、

圧力を取り入れるネジ部からノギスを入れて測定すると

82.48mmが表示されました。

以前にGTRマガジンの撮影用で切断したアキュムレーターで

ピストン位置を再現すると・・・

↑このような状態になります。

ちなみに、新品のアキュムレーターでの同様の測定では、

↑ですので、内部を切断モデルで再現しますと

本来、アキュムレーターの黄色の部分には窒素ガスが封入され↓

フリーの状態では、画像の位置までピストンを押し戻し

気圧と同等の状態で停止しているのが正常です。

しかし、この圧力を作るがめのガスが抜けてしまったため、

ピストンが↑の位置で止まったままの

「まったく圧力を貯められない」状態です。

 

アテーサE-TSは、モーターと圧力スイッチによって作られ

アキュムレーターに貯められたフルードの圧力が

ソレノイドという水道の蛇口のようなバルブで制御され

センタートランスファーのクラッチを加圧し

トランスファー内部のディスク間で発生する摩擦で

フロントタイヤを駆動するシステムです。

メーターにある「フロントタイヤトルクメーター」は、

「ソレノイドの開き」が表示されていますが、

アキュムレーターが壊れたアテーサE-TSでは、

4WD風にトルクメーターが動いても

フロントタイヤにはまったく駆動がない「ほぼFR」です。

このような状態に、フロントタイヤのトルク配分を増やす目的で

アテーサコントローラーを取り付けたとしても、

水の出ない蛇口の開く角度を変えているのと同じで、

まったく走行に変化が出ない事になります。

 

アテーサE-TSを正常化する事での効果として

リアがスライドしても、修正の操作が安易である事と

前に進む動きによりモータースポーツでのタイムアップの可能性が高く

特にウェット路面での直進安定性は大幅に改善されます。

 

スカイラインGTRのアテーサE-TSは、

作動圧力を測定する能力が無く、

その数値が大幅にずれても異常の判断ができず

そのまま使用してしまうケースが多いようです。

少しずつ壊れ、FRでも4WDの気分になってしまうため、

異常にオーナーさんが気がつかないのですが、

今回のような事例はとても多いようです。

 

 

 

ブレーキ3

もう3か月くらい前の続き・・・

ブレーキの話です。

 

ブレーキペダルの踏力を油圧でブレーキキャリパーに伝える液体が

ブレーキフルードで、最も重要な性質一つが高い沸点です。

ブレーキは、パットとローター間の摩擦で制動力を得る構造から

摩擦熱は確実に発生しますが、

特にドラムブレーキには、熱が貯まりやすい構造上の問題があり、

ブレーキフルードの温度を上げ

フルードが液体から気体に変化する沸点を超えると

沸騰し泡立ち気体化しブレーキに必要な圧力の伝達ができず

べーパーロック現象を発生させます。

体験する機会は少ないですが

サーキット走行会などでブレーキフルードを古い状態や

通常のストリート用を使うと、

楽しくて何周も何周も走っているうちに、

ブレーキペダルに反力が無くなり、いきなりフロアまで沈み

最大級の恐怖を経験する事があります。 (体験談)

サーキットでは、そのような時の危機回避のために、

コースの外にグラベルと呼ばれる避難ゾーンがありますが、

一般道、特に山道の下りでブレーキペダルがフワフワになったら

↑ここが必要になります。

ですが、最近はブレーキ性能が上がり

ほとんど見なくなりました。

もし、緊急でここを利用した際

車輛が大きな損害を受けるのは間違いないでしょう・・・・。

 

このフルードですが

性能を表すための規格があります。

DOT5 とか DOT4 とか DOT3は、

これは沸点と粘度を表していますが

主には沸点です。

単純にはこの数値が高いほど

激しい走行で発生する温度に耐える能力が高いです。

しかし、「DOT5は使ってはダメです!」は、

最近でも意外と耳にする言葉ですが、

いろいろな情報は混じりますが、

リオでは、DOT5を推奨しています。

 

ずっと昔、高い沸点を実現するため

DOT5規格のフルードでは、

成分にシリコンを採用した製品がとても多かったのですが、

シリコンには沸点では激しい運転での摩擦熱に対する性能はあっても

水と一切混ざらないため、

大気中の水分が微妙にフルードに混ざった際、

油(正確にはフルードは油ではありませんが・・・)より重たい水は、

スルスルとキャリパーまで落ち、

フルードの沸点が200℃以上であっても

水の沸点の100℃で簡単に沸騰し

べーパーロック現象を発生させる可能性があります。

そして、こちらがより危険な性質ですが、

シリコン成分は、ゴム類への攻撃性が強く、

モータースポーツでは常識的な

レースなどのサーキット走行の都度にブレーキシールなどを交換する

短期メンテナンスが前提では

沸点の高さが優先されこの性質によるリスクは低いのですが、

長期間での一般的な使用方法では、

シール類がいきなり破砕し、

走行中にブレーキがまったく効かなくなる現象が発生するリスクがあります。

「しばらく乗らない」を前提に自動車税等の節約からナンバーを外し

登録していない状態で数年経過したロードスターを復帰させるため

積載車でオーナーさんのご自宅に伺った際、

ブレーキもクラッチも床まで手ごたえ無しで踏み切ってしまう状態で

傾斜を利用して、人力で積載車に載せたのですが

リオまで搬送後、リフトでクラッチとブレーキのマスター関係を分解すると

ゴムがバラバラになっていました。

それまでメンテナンスしていたショップさんが

モータースポーツ前提でシリコン系のフルードを

ブレーキにもクラッチにも使用していたらしく、

保管場所までは正常に運転できていたロードスターですが

長期保管でゴムが破砕した事が先の現象の原因だったようです。

ブレーキはともかくとして

沸点の上がらないクラッチフルードにだけでもグリコール系使用であれば

クラッチだけでも通常使用できたハズです。

しかし、これは実はとても危ない現象で

この段階でゴム類が破砕していなければ、

痛んだ状態で、車両にナンバーが復帰し走行できるようになった後、

突然、ブレーキやクラッチが機能を失い

事故の危険リスクが高くなっていた可能性があります。

この車両は、ブレーキ、クラッチ関係のゴム類は、

キャリパーに至るまで、すべてリニューアルされ性能が復帰しました。

 

「DOT5は使ってはダメです!」について

時代は流れ、

今やグリコール系の成分でもDOT5の規格をクリアできるようになり

最初の沸点の高いDOT5の方が長持ちするようなケースもあり

こちらでは、DOT5を主に使用しています。

 

ブレーキ関係のお話は、

他にもたくさんあるので

またの機会に・・・

 

 

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